左脳思考のアイデア「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」森岡毅著
【もくじ】
数年前に読書した、ビジネス系の本のネタバレを7分で解説していきたいと思います。今回はこちら。
「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」森岡毅著
ショップ店員のころに私の仕事力を上げた本。2014年に発行された本を加筆した文庫版です。この本がヒットしてから「マーケティング」というワードがよりメジャーになった気がします。
「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」どんな本?
一言でいうと、数学に強いマーケター森岡氏が倒産の危機だったUSJへ転職してからの奮闘記といったところでしょうか。
2001年に大阪にできたテーマパークのユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJと略します)。年間1100万人も来場者でにぎわっていましたが、8年後には700万人まで減ってしまって大ピンチ。黒字に回復するべくヘッドハンティングされた森岡氏を待ち受けていた壁と、その壁を乗り越えていく熱血なビジネスマインドと、マーケティングの必要性とおもしろさが書かれています。
題名が長めだし、後ろ向きがどうした?と思いますよね。
USJでは後ろ向きに走るジェットコースターが大人気で、このアトラクションの効果で一気に来場者数がアップ。ここで増やした利益でハリーポッターの壮大なエリアを作ることができ、USJをV字回復へとつなげる大きな役割を果たせたそうです。
お金がない中、知恵をしぼって、もともと前を向いて走っていたアトラクションを、数本に一本を後ろ向きに走らせてみたら大ヒットした!という逆転のヒラメキアイデアがスゴいっしょ!という・・・超前向きなお話です。
他のノンフィクション本との違いは、右脳より左脳思考が鍛えられる
森岡さんは、クリエイティブなアイデアマンタイプではなく、むしろ真逆の論理や数字で考えるアタマが四角いタイプだとご自身でおっしゃっています。完全なる左脳派タイプ。(う〜ん、直感型の私とはたぶん正反対です)
ちなみに外見はずんぐりむっくりしてコワモテですけど、関西人のユーモアと家族想いのお父さんみたいですw
アイデアなんていくらでもありそうだけど、テーマパークでの企画の実行は多大なコストがかかります。ゆえに、失敗は多大な金額のロス。だからこそ可能なかぎり失敗を減らしてお金に変えていくためにマーケティングのリサーチ力やデータ分析力、数学的な予測値を出して検証していく・・。
経営陣が「ちょっとひらめいたから、このアイデアやってみない?ウケる気がするんだよね」ってよくある甘い予測じゃありません。
直感(右脳)にかたよらずにロジカルシンキング(左脳思考)で緻密な戦略と戦術をかさねて成功につなげていく内容が他のアイデアハウツー本やノンフィクション本と違うところでしょうか。
NHKの人気TV番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で“ナニワの軍師、再起のテーマパーク~マーケター・森岡毅”という回でも取り上げられてました。
ハリーポッターの新アトラクションがオープンし、森岡さんたちマーケターチームが数学的思考力を駆使して予測した数値にピッタリとハマった瞬間まで撮影されていて、緊迫のあのシーンには鳥肌が立ちました。オンデマンド放送で見られるみたいなので、気になる人はぜひ。
左脳思考から右脳(ヒラメキ)へとつなげるマインドマップ
この本のもくじは、戦略やら戦術を考えるマインドマップみたいになっていると思います。もくじを見るとUSJで生まれた数々のアイデアの軌跡が分かります。
もくじ引用
- プロローグ 私は奇跡という言葉が好きではありません
- 第1章 窮地に立たされたユニバーサル・スタジオ・ジャパン
- 日本人はどうしてリスクを冒さないのか?
- 私が戦う「最大の敵」
- こだわるポイントが間違っている
- 3段ロケット構想
- 9回裏二死ランナーなし!
- 第2章 金がない、さあどうする?アイデアを捻り出せ!
- 第3章 万策尽きたか!いやまだ情熱という武器がある
- モンハンを呼ぶにはモンハンを知り尽くすこと!
- 動きながら考える方が良いこともある
- 情熱が予測もできない局面突破を呼び込むことがある
- 世界一の光のツリー
- 第4章 ターゲットを疑え!取りこぼしていた大きな客層
- 第5章 アイデアは必ずどこかに埋まっている
- 一難去ってまた一難、2013年を生き抜くには?
- リノベーションというマーケティング技法
- 誇りを持って世界中からアイデアを探す
- スパイダーマンをリノベーションせよ!
- 答えは必ず現場にある
- 技術陣の大反対
- ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ〜の誕生
- 第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法
- 第7章 新たな挑戦を恐るな!ハリー・ポッターとUSJの未来
- なぜハリー・ポッターで450億円ものリスクを取るのか?
- 世界最強のブランドで勝負できるのは今しかない!
- エクセキューション段階での失敗リスクが小さい!
- 関西依存の集客体質から脱却しないと手遅れになる!
- 戦略と情熱の狭間の決断!
- 世界最高のテーマパーク・エンターテイメントの結晶
- ユニバーサルの技術の粋を注ぎ込んだ造形と演出のクオリティー
- 世界最高のライド「Harry Potter and the Forbidden Journey」
- トイレまでがアトラクション
- 長時間列に並ばなくてもエリア入場できる整理券システム
- エピローグ USJはなぜ攻め続けるのか?
- 文庫版あとがき 打ち上げられた「ハリー・ポッター・ロケット」
- 世の中のUSJへの認識を変えたかった
- なぜその日に止まる!?
- 追い詰められた8月
下記に気になる章をいくつかピックアップしてみます。
仕事で使える!アイデアの生み出し方は課題発見→課題解決!
USJって、もともとは映画にこだわっていた気がしたけど、いつの間にやらマンガやアニメやゲーム、キャラクターのなんでもありな方向に変わっていったな〜という理由がもくじから追っていけます。
それが、第2章の“「映画だけ」のテーマパークは不必要に狭い!”という課題発見から、“USJは世界最高のブランドを集めた「セレクトショップ」”という課題解決へとつながっていました。テーマパークの在り方=コンセプトが変われば、ターゲット層も変わっていきます。
人気ブランドのセレクトショップですから、競合ディズニーとはかぶらないサンリオなど子供ウケするキャラクターを活用してファミリー層を取りこもう!となっていくんですけど、そのアイデアが生まれるまでのキッカケがあります。
第4章の“JAWS事件でわかったUSJの弱点”では、森岡さんが家族でUSJへ行った体験からヒントを見つけています。お子さんがジョーズのリアルさに怖がってしまい、映画テーマパークとしてリアルとスリルを追求したことで大人向けのエンターテイメントになってしまっていること。子供と一緒に楽しめないテーマパークになっていると気づくわけです。一般の家族づれなら気づきそうなことでも、働いてる側って気づかないことってよくあります。
第5章では、具体的なアイデアの生み出し方が書かれています。スパイダーマンのアトラクションは、すでに海外で成功していたアトラクションを最新技術をプラスしてリノベーションしたものだそうです。結果は大成功!
アイデアって生み出すのが超苦手な人もいますよね。
森岡さんがおっしゃっているアイデアの生み出し方は「アイデアは世界中をサーベイして盗め!」ということ。外資系で働いていたからこそ気づいたそうですが、日本人は何でもゼロからはじめようとしがちだといいます。
この世界中のどこかに、過去から現在に至るどこかに、似たような問題に直面した人がいるのではないか?と疑ってかかりましょう。世界中からアイデアを探すのです。
なるほど。成功ビジネスモデルには競合がはびこるわけです。
“1.どこかで成功しているアイデアを土台にした方が企画推進には圧倒的に速い。”
“2.どこかの消費者で試されている分だけ成功率が高い。”
“3.アイデアの引き出しがものすごく増える。”
と3つのメリットを上げていました。自分自身で考え出したいなんていうのは、個人のエゴだと。会社のためなら速くて確率が高い方がいいに決まっている!と。資本主義の海外でもまれてきたビジネスマンは容赦がないっす。
一流のマーケターの文章から、どんなアイデアも過去の実例の断片の組み合わせに過ぎないということに気づかされました。
私が1番マーキングした章は、第6章“数学的フレームワーク”
この章は私には画期的でした。数学的なアタマの人は、ロジカルシンキングで正解にたどり着く確率を上げています。検証には足して100になるよう仮説を立てているそうです。
どういうこと?ってなりますね。分かりやすい一節がこちら。
数学的に頭を使わない人は、例えばこんな風に仮説を考えてしまいます。
「子供づれファミリーの集客が下がっているのか?あるいは女性の集客が下がっているのか?」それじゃダメなんですね。なぜなら足して100にならないからです。
(略)数学的に頭を使う人ならこんな仮説を立てます。
「男性の集客が下がっているのか?女性の集客が下がっているのか?」
「11歳以下の子供の集客が下がっているのか?12歳以上の集客が下がっているのか?」
「子供づれファミリーの集客が下がっているのか?それ以外の集客が下がっているのか?」これらは、それぞれ足すときちんと100になりますね。ですから、子連れファミリーを調べて本当に顕著に下がっているなら、その原因(宝)を探しだせればOK、見つからなかったらもう一方のどこかに宝が埋まっていることが明らかになるのです。
私、ダメな方の思考だったわ・・・と気づかされましたw
USJ余談。ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドについて
本のタイトルにもある、後ろ向きに走ったジェットコースターのアトラクション名は“ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ〜”です。その余談をば。
このジェットコースターは、ライドしながら音楽が聞けます。しかも5曲から選べる。流行りのポップスや洋楽だけでなく進撃の巨人主題歌やら名探偵コナンのメインテーマやら、アニオタや子供にもうれしい選択が。定期的にリニューアルされています。浮遊感を楽しみつつノリノリで乗れるわけです。
じつは私も体験しました。絶叫系はキライなのに、前方に投げ出されようなスリルと浮遊感がハンパなくて、おかわりを3回もしてます(バックドロップは1回、前向きライド3回)
後ろ向きだから、高層ビルに宙吊りされたまま地上が見える姿勢でだんだんと上がっていきます。後ろに落ちても前に落ちても怖すぎます。人生であんなに絶叫したのは初めてかも。
入場口で後ろ向き(バックドロップ)か前向きのライドを選べるんですけど、前向きが2~3台で運行しているのに対して、バックドロップは1台のみ。そのため待ち時間が長いので「ユニバーサル・エクスプレス・パス7~バックドロップ~」を予約しておくと待ち時間を短縮できます。USJアトラクション時間短縮のコツならググってみるといろんなブログで紹介されてますよ。
次回は、私のモチベーションを上げた本。を書きたいと思います。