優等生JK、十二国で迷子になりフんだりケったりでグレる【月の影 影の海】上

少し方針を変えて、ビジネス以外の本を書く。

じつは、ずっと書きたかった小説だ。

かれこれ15年ほど所有している本。

小野不由美が書いた小説、「月の影 影の海」

著者が言い出したわけでないらしいが

そのストーリーの濃厚さにハマってファンとなった読み手が

十二国記シリーズ”と呼び始めて商業的コピーになるほど広まったらしいからスゴイ。

しばらくは、このシリーズ作品についてぶっちゃけて書きたい。

十二国記との衝撃すぎる出会い

高校2年の時だ。

深夜も近い11時ごろ、何気なくつけたテレビ画面。

再放送アニメのオープニング映像に流れた象形文字のようなイラストに目がひかれた。

悪夢にうなされて始まる女子高生(以下JK)目線のストーリー。

 

面白そうと思ったのもつかの間

オープニング画像とは程遠い、ひたすら退屈な学校生活が描かれる。

主人公らしきJKは、まるで女版の碇シンジ

でも、初号機とか使徒が出てくる気配皆無。

(ありがちな学園ドラマか)

と思ったら、JKが通う高校に金髪の男が登場する。

急展開を予感させるBGM。

 

黒装束の長い金髪の男は言う。

「あなたは自分の主人、お守りするには一緒に来ていただく他ない」

なんてキザなセリフ。

男は膝まづいたあげく

「許すとおっしゃい!」

となぜか尊敬語で強引に迫る。

許すと言うか否かが物語の鍵になるが、知るわけない。

 


十二国記 第1話

↑「命が惜しけりゃ許すとおっしゃい!」12:15ごろ。

 

「許す」と言わされつつもJKはトキメクどころかドン引き。

外では敵らしき異形の巨大カラスが暴れまわり、屋上で男が臨戦態勢をとる。

男はJKに剣を渡して、戦え!と主張。

あなたが使えばいいじゃん!とJKも負けじと主張。

(ああ、ありがちな召喚バトルアニメか)

と思ったら、金髪の男

「自分には剣をふるう趣味はない」

意外性ありすぎのセリフ。

(守るって言ったじゃん!)

 

なんとか高校の屋上から海岸に避難した先にまで

巨大カラスがしつこく追ってくる。

「アレだけでも斬っていただかないと(逃げきれない)」

と丁寧なのにスゴいことを言う金髪の男。

剣なんて握ったことないわよ!と困惑するJKに

幽霊みたいなものをムリクリ憑依させ

強制的に剣を握らせる金髪の男が鬼畜すぎる。

体が勝手に動いてしまうJKは、泣き叫びながら巨大カラスを仕留めるハメに。

 

 

休むまもなく異世界にムリやり連れていかれるJK。

しまいには途中で海に落っこちて気絶。

目覚めたJKの前に広がる、七色に光る海の描写。

 

ここでようやくこのアニメ作品が

日本ではなく異世界を舞台にしたストーリーだと気づいた。

予測不能十二国記の強烈シビアなストーリー展開

フツーなら物語の案内人になるはずの金髪の男(イラスト右)は行方知れず。

一切の説明がないせいで、主人公のJKとともに視聴者も迷子の気分だ。

異世界で迷子状態のJKは、散々な目にあう。

 

異国の住民に殴られたり

妖魔(バケモノ)に食われそうになったり

妓楼(風俗店)に売られたり

指名手配されたり

ようやく出会った日本人に裏切られたり

嘘か本当か分からない幻想で故郷の人間の冷酷な本音を突きつけられたり

行き倒れた末に通りすがりの人物に手のひらを串刺しにされたり

と、ふんだりけったり。

着替えもないから↑イラストみたいに制服がボロボロになりながら逃げ回るJK。

 

放送しているのはNHKなのに、見る人も絶望させるぐらい暗い。

どこにたどり着くのかまったく想像できない予測不能の状態。

(どうしたNHK!?)

原作を知らない私は、放送局がマジで企画チョイスをしくじったんだと思った。

 

なにより主人公であるJKが「いい子ちゃん」で嫌われ要素満載、とことんサエない。

しかしながら、

日本人ばなれした印象的な赤髪と緑の瞳。

幽霊みたいなものに憑依されてイヤイヤ言いながら

セーラー服で剣をふるってバケモノを切りまくる姿はサエまくっている。

強烈なビジュアルを生かしきれていないキャラの持て余しぶり。

(脚本がいけないの?そもそも原作あるの?)

 

JKは、はぐれてしまった金髪の男の足がかりをなんとかつかもうとする。

帰りたい、とひたすら嘆いて涙する。

しまいには、自分の境遇におとしめた金髪の男を激しく逆恨みし始める。

「許す」と言わされたけど「あいつマジ許せん!」ってなる。

(どうやら恋愛モノではないらしい。)

手のひらを串刺しにされて、雨のなか昏倒する寸前まで

JKを絶望に追いやる描写に容赦がない。

(なんてヒドい話なんだ!!オチは!?)

 

業を煮やしたのはアニメ十二国記に、あのネズミが登場するシーンの頃だった。

小説なら、ちょうど上巻から下巻への転換部。

正直、NHKへの苦情ヤバいんじゃないかと思ったし

シビアすぎて、まったく先が読めないストーリー展開に

本屋へ走ったのを覚えている。

 

つまり、物語の中の主人公JKだけじゃなく

視聴者もイヤになるくらいの前半だったと言うわけだ。

徹底した主人公目線でともに異世界を迷走する感覚が十二国記「月の影 影の海」

当時はホワイトハート版しかなかった原作小説を読み進めながらの

アニメ視聴という見方をしていた。

もう完全にハマっていることにも気づかないぐらいのドハマりっぷり。

 

JK主人公・陽子がどうなるのか

オチがどうなっているのか

ハッピーエンドか、バッドエンドか

あせる気持ちを抑えながら順に追っていったのを覚えている。

 

その答えは、どっちでもなかった。

現実に生きる自分たちの正解のない選択と同じ。

JKだった主人公には新たな人生をスタートさせていく展開が待っていた。

ラストまで徹底した主人公目線で書かれた物語

ともに異世界を迷走する感覚を味わえたからこそ自分ゴトのように思えてくる。

 

神仙、妖魔、ファンタジックな世界でありながら

描かれた登場人物たちは、かなりリアルで人間味がある。

選ばれた主人公ですら超人的なヒーローではなかった。

ズルさも、したたかさも、卑しさも赤裸々に描かれ、人物像が暴かれていく。

ここから続くシリーズへの伏線の数々は、見事としか言いようがない。

 

ミュシャのイラストをおもわせる絵が印象的なこのシリーズ小説は

ライトノベル層の出版社から始まり

時を経て、イラスト挿絵のない一般層向け出版社まで

各出版社をまたいでも表紙を変えて出版されているのは

各社ベテランの編集者から見ても

幅広い層に受け入れられる物語だということを表している。

 

「月の影 影の海」の種明かしは、ぜひ続けてしていきたい。

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